メンタルヘルス対策が社会的課題に
わが国の経済・産業構造は大きな転換期を迎え、労働者の就業意識や働き方の多様化など変化が顕著です。
このような中、リストラによる出向や失業、企業閉鎖など、雇用不安が広がって、ストレスを訴える労働者の割合が高くなっています。一方、年間自殺者が過去12年間連続して3万人を超え、その原因には社会・経済的理由のほか、職場の人間関係が上位に挙がっています。
職場において心の健康問題に取り組むことは、労働の質の向上と職場の活性化につながり、生産性を向上させることに寄与します。また、心の病気は長期休業による労働損失や、作業能率の低下、職場の士気に影響を及ぼすことが明白であり、企業のリスク管理の観点からも重要となっています。
産業カウンセリングによる企業メリット


働くしくみがストレスを生む
部下を持つ管理職が少なくなったが
情報革命の進展で、職場での仕事のやり方が変わり、多階層的であったラインがフラット化し、中間管理職が減らされています。しかし、このことが逆に管理監督者と部下との距離を縮め、直接的責任を増大させることになっています。旧労働省が出した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(2000年)でも、労働者自身の健康に対するセルフケアとともにライン管理監督者によるケアの重要性が強調されています。こうして、企業からの管理職研修の要望が当協会に増えています。
管理職に必要な3つの役割とカウンセリング・マインド
國分康孝氏(東京成徳大学副学長・協会顧問)は、部下を持つ人間としてなすべき役目についてこう言っています。
「3つあると思う。
(1)どのようにして集団をまとめていくか、(2)どのようにして集団を動かしていくか、(3)どのようにして一人ひとりの部下を育てていくか、である。
(1)については、部下の求めているもの、部下の欲求を絶えず充足していくことであり、(2)のためには〈これでいくぞ〉という目標を掲げなくてはいけない。プロのカウンセラーなら、この登校拒否児がせめて週に4日は登校するようにしよう、といった目標を立てる。目標がなければ、行動を変容させようがない。管理職はどういう目標を立てたら、部下のやる気をだせるか、また、この目標には無理はないか、と考える必要がある。では(3)の仕事は、部下の一人ひとりを育てることである。本人の能力と興味が何であるかを気づかせることである。伸びる人とは、能力と興味が一致した分野で仕事をしている人である」 これ以上、詳しくは紹介できませんが、要するにカウンセラーは、クライエントにどう接するのが最も良い方法かを始終考えているわけです。そういう意味で、カウンセリングの諸技法を学ぶことは有効です。でも、管理職の方がカウンセラーになりきることはできません。せめて、その精神(カウンセリング・マインド)だけでも学んで職場で活かしてほしいのです。それが当協会の管理者研修の一つの特徴となっています。
メンタルヘルスにおける管理職の役割
ライン管理者の役割は、
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1つは部下の「仕事上のストレス要因」を把握し、除去・軽減すること(仕事の量、仕事の質、過重労働、テクノストレスなど)
- 2つは「緩衝要因」(周囲からの援助、ストレスを軽減できる要因)について配慮することです。
また、同じことであっても、反応には個人差があります。管理者としては、個人差にも目を向け、一人ひとりの違いに合わせた対応をすることが求められています。
なぜ研修依頼が増えているのか
産業カウンセリングの2つの視点
| 視点1 |
「セクハラを受けた」その気持ちを受け入れる |
セクシュアル・ハラスメントの防止、救済で重要なことは、第一義的にはセクハラを受けた人が「セクハラだ、と感じたことがセクハラだ」ということです。
それだけに個人差がありますが、まず、そこを受けいれ、傾聴することによって、彼女・彼は何を訴えたいかの本当の気持ちをきき取ることが肝心です。
セクシュアル・ハラスメント被害者は、その事実を訴えるだけでもかなりの精神的負担を強いられます。自分にも落ち度はなかったのか、必死に抵抗していたら、あるいはハッキリ誘いを断っていたらと自分を責めてから、やはり立ち上がらないと、と決意しています。しかし、決意できたとしても周りからの批判もたえません。たとえば、振られた腹いせじゃないか、といった中傷や、優秀な人間の出世を駄目にした責任は取れるのか。妻や子どもがかわいそうなど。そして、あの忌まわしい現状の再現は、あの日の恐怖をフラッシュバックさせるでしょう。こうして被害者は2度目の被害を受けるのです。ですから、彼女に寄り添い、彼女を援助しなければならない。それができるのが産業カウンセラーです。
「パワハラ」も「セクハラ」も根っこは同じ差別
アメリカでも最初の頃はセクシュアル・ハラスメントを認めませんでした。
「史上初のセクハラ裁判」といわれるバーネス事件でコロンビア特別区連邦地裁判決(1974年)は、バーネスが差別的取り扱いを受けたのは「上司の要求
を拒絶したためであって、女性であるからではない」として性差別を認めませんでした。
このように、「セクハラ」は「パワハラ」の問題とされてきました。そうなると「職場のイジメ」は、どうなるのでしょうか。
「和」の思想と少数者排除 イジメの構造
聖徳太子の17条の憲法にうたわれた「和を以て尊しとなす」以来の伝統的文化なのか、稲作を中心として発達した農耕民族による灌漑築造より発生した村落共同体「結い」からきたものなのかは議論のあるところですが、現代企業においても、グループによる生産システムが生産性を発揮しています。こうした「和」を生かした集団化は、集団外に対しては対抗色を高め排外することによって集団内部の団結を強めるという力を発揮してきました。しかし、内部の団結を至上におくと内部の少数意見を敵視し、外に排除するか、多数に従わせようとします。ここに集団によるイジメが発生します。こうした、広い意味での「パワハラ」を克服するには、「和」の優位点を生かしつつ弱点を克服する必要があり、そのためにはグループ・カウンセリングやコミュニティ心理学的アプローチが必要になると考えます。
「パワハラ」で労災認定
2005年、道路舗装の大手工事会社(本社東京)の某県内の営業所長の男性(当時43歳)が2004年9月に自殺した件について、当該労働基準監督署は業務上と労災認定しました。
当時、弁護団は「パワハラ」(職権による人権侵害)が原因と認められた異例のケースとしましたが、このようなケースは増えてきています。こういったなかで、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の一部が改正されました。つまり、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(強度

)が追加されました。