研究所設立趣意書

研究所設立趣意書 〔会報No.258(2009年1月号)掲載〕

産業カウンセリング研究所
「設立趣意書」策定、本格始動へ

調査活動などの事業を具体化

当協会は産業カウンセリング研究所の活動を具体化することを今年度の事業計画としてきましたが、昨年9月に渡邊忠氏(前文教大学教授)を当協会参与に迎え、活動を本格化する準備をすすめてきました。また、当協会として研究活動を推進するため理事長を所長とし、理事による運営委員会を設置しました。運営委員会では、研究活動を具体化するため、あらためて「設立趣意書」を策定するとともに、研究の活動方針の骨格を確定しました。当協会創立50周年も近づいていることから、当面、調査研究活動などを具体化してゆく方針です。

1.産業カウンセリング研究所設立趣意書

1.研究所の必要性

(1)産業社会の動向
現在の産業社会は、経済がグローバル化するとともに知識社会へ進化し、それらに呼応して企業間の競争が激しくなり、企業は経営の効率化のため設備投資や人件費の抑制を強めてきている。このような状況のもとで、雇用管理の面では、戦後のわが国の経済発展を支えてきた終身雇用・年功賃金制度が崩壊し、能力給・成果主義賃金制度の導入や、リストラ・非正規労働者による雇用調整によって非正規雇用者が増大し、両者の賃金格差が広がりを見せている。その一方、こうした雇用政策のもとで、勤労者が自発的な職業能力の開発や向上をめざすうえで、勤労者自身に自立的なキャリア形成を求める風潮が強まっている。
このような雇用環境の変化は必然的に労働環境にも大きな影響を及ぼし、正規雇用者の業務負担の増大、総労働時間の増加、年次有給休暇の未消化などの過重労働等が大きな問題となっている。一方で、正規以外の雇用者は低賃金と不安定な雇用を強いられている。さらに、厚生労働省のストレス調査によると、ストレスの原因として「人間関係」によるものが最も多くなっている。職場におけるコミュニケーション不足による人間関係の希薄化が、その要因であることが顕著となり、現場力や勤労者の意欲の低下、パワーハラスメント、いじめの原因にもなっていると思われる。その結果は、働く人のストレスを高め、うつ病発症や自殺などのメンタルヘルス上の問題を引き起こすだけでなく、労災事故や、企業モラル低下による不祥事多発の遠因にもなっていると考えられる。

(2)協会の役割
当協会は、戦後の高度成長期に勤労者支援のための団体として1960年に設立された。産業カウンセリングは、高度成長下で電機・重化学工業などが発展し、若い労働力が農村から都市に集中してくる状況のもとで、そうした若い勤労者を支援することから出発した活動であった。その後、勤労者を支援する活動を積み重ねるなかで産業カウンセラーとしての活動領域を拡充させ、今日の三分野、「メンタルヘルス対策への援助」「キャリア開発への援助」「職場における人間関係開発への援助」へと発展してきた。この間、当協会が1970年代から今日まで、産業カウンセラーの育成を重点的な課題として取組んできた結果、有資格者は3万3千人を超えている。日本の産業社会にカウンセリングを重視する風土を作り出してゆくうえで、当協会の産業カウンセラー養成講座が果たしてきた役割は大きなものがあり、いまや全国45都市で毎年開講され、受講者数は4千人に達している。
こうして、有資格者を中心に組織されている当協会は、会員数が1万8千人を超えている。当協会は全国研究大会を1970年から毎年開催し、会員(賛助会員を含む)をはじめとする関係者に研究発表および情報交換の場を提供することによって、その技能・素養の向上のための研究活動を継続してきている。
一方、当協会は公益法人としての社会的役割を果たすため、企業や自治体向けにメンタルヘルス等をはじめ各種研修活動やカウンセリング実践等の活動をすすめてきている。最近では、産業カウンセリングサポートセンターやADRセンターを設立し、広く社会貢献活動を実施してきている。

(3)研究所に対するニーズと担うべき役割
当協会が上記の活動をさらに発展させるとともに、変化する産業社会に対応するためには、第一に、産業カウンセラー等資格取得者の実践性、実効性、汎用性をより高めて産業界に送り出すこと、第二に、産業社会が向かう今後の方向を見極め、3つの活動領域に関わる情報を、有資格者をはじめ企業や自治体等の組織、一般社会に発信してゆくことが不可欠である。そのためには、経験知に依拠するだけでなく、より実証的見地から3つの活動領域に関する諸問題の解明を行い、論理的根拠に基づいた理論や技法を開発するとともに、現在までの当協会の歴史的な知的財産を顕在化し、後世へ継承することも必要である。
そこで、2010年度に当協会設立50周年を迎えるにあたり、産業カウンセリング研究所としてこれらの研究的活動を充実、強化することとする。

2.研究所の基本的姿勢

(1)研究的姿勢
当協会の主要な活動領域であるメンタルヘルスケア、キャリア・カウンセリング、人間関係開発の場面で生じる諸問題への対処は、経験の蓄積のみでは限界がある。そこで当研究所では、何らかの対処を必要とされた問題について事実の収集に基づいて、仮説をたて、質問紙や面接による調査、観察、実験、アクション・リサーチなどの科学的方法を用いてその検証を行うとともに、対策の提言や技法の開発、理論の構築をすすめることを旨とする。

(2)実践的姿勢
産業カウンセリングは、主に産業場面で生じる現実の問題の解決を支援する極めて実践的な活動である。したがって、当研究所は研究のための研究ではなく、資格取得者や企業・団体・自治体等にとって現実に有効な対策の提言、効果的な技法の開発、実践的な理論の構築を旨とする。

(3)客観的姿勢
当研究所は特定の立場や理論に偏ることなく、研究結果で得られた事実を客観的かつ真摯に受け止める立場を堅持する。さらに、学問の自由を堅持しながらも、実践の場における有効性を規準に研究を行うことを旨とする。

3.研究所の組織

(1)組織の基本姿勢
当研究所は、当協会の調査研究部門を発展させた附属機関である。しかし、研究の自由を保障するために、その活動については可能な限り自主性を尊重する体制をとる。

(2)運営組織
運営は「研究所運営委員会」が、当たることとする。「研究所運営委員会」の構成は別に定める。

4.事業内容

(1)研究活動
1)理論研究
2)調査研究
3)開発・実験研究
4)予測研究

(2)研究基盤の構築
1)情報収集
2)文献および研究者などのデータベース作成
3)資格試験問題に関連するデータベース作成

(3)研究成果の発信
1)会員・資格取得者へ
2)産業界および一般社会へ

(4)受託事業
1)研究の受託
2)教育の受託

5.財政

当研究所の財政は、当協会本部の会計による。

2.産業カウンセリング研究所事業内容(詳細)

1.研究活動

(1)理論研究
最新のカウンセリング理論や技法の産業場面への応用法の提案、独自の調査研究などから得られた知見の理論化などを行う。

(2)調査研究
産業界において生じているメンタルヘルス、キャリア・カウンセリング、人間関係開発にからむ諸問題について質問紙調査、面接調査などを実施し、その結果から問題の解決策の提言を行う。

(3)開発・実験研究
上記(1)、(2)の研究成果および当協会理事会からの要請に基づき、新たな技法や教育プログラムなどの開発を行い、試行的に実験事態を構成してその有効さを検証し、提案する。

(4)予測研究
産業界の動向の分析からメンタルヘルス、キャリア・カウンセリング、人間関係開発にからむ諸問題を予測し、対処策を提言する。

(5)その他

2.研究基盤の構築

(1)メンタルヘルス、キャリア・カウンセリング、人間関係開発関連の研究情報収集公刊されている文献(単行本、学会論文誌、専門誌、白書など)の収集、雑誌記事およびインターネット・サイト記事などのファイリングを行う。関連学会の研究大会、シンポジウム、講演会などに参加し、情報収集および交流を行う。

(2)メンタルヘルス、キャリア・カウンセリング、人間関係開発関連の研究情報および研究者、実践家などのデータベースの作成

(3)産業カウンセラー等の資格試験問題関連のデータベースの作成

(4)その他

3.研究成果の発信

(1)産業カウンセラー等資格取得者および会員・賛助会員に
1)研究成果、研究情報の提供
会報(機関誌)、ホームページ、メールマガジン、全国研究大会、講演会などを通じて、研究成果および収集した情報を提供する。
2)研究支援
関連学会、全国研究大会などに発表する論文作成など、研究活動の支援を行う。
3)協会発行の文献への協力
講座テキスト、過去問題集、事例集などの作成に協力する。
4)全国研究大会への協力
全国研究大会のテーマ選定、研究発表などに研究の視点から協力する。
5)養成講座への支援
開発した新たな手法などの紹介を行う。また、養成講座のカリキュラムへの提言および実技指導者に対する教育への支援を行う。
6)その他
会員などからの問い合わせ、質問に対応する。

(2)産業界および一般社会に
1)研究成果、研究情報の提供
学会発表、新聞発表、雑誌寄稿、ホームページへの掲載、当協会出版物、講演会などによって提供する。
2)その他
企業、自治体、団体などからの問い合わせ、質問に対応する。

4.受託事業

(1)研究の受託
企業、自治体、団体などからの調査などの研究依頼を受託する。

(2)教育の受託
企業、自治体、団体などからの講師派遣の依頼を受託する。

(3)その他
新聞、雑誌などへの執筆依頼を受託する。

以上

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